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福岡高等裁判所 昭和24年(つ)1397号 判決 1950年3月16日

被告人

飯島定夫

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役三年に処する。

原審未決勾留日数のうち百日を右本刑に算入する。

原審及び当審の訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

被告人及び弁護人佐々木淸綱の各控訴趣意について。

各控訴趣意の要旨は、被告人は、窃盜の罪を犯した事実なく、原判決が被告人に窃盜の犯罪事実ありとしたのは、事実誤認の違法があるというのに歸着するのであるが、原判決が摘示する犯罪事実は、その挙示する各証拠を綜合してこれを認められないことはない。なるほど、被告人の窃取事実について、いわゆる直接証拠と目すべきものは、記録上存在しないのであるが、原判決の挙示する各証拠によれば、被告人が所持していた二台の自轉車はいずれも盜難品であつて、そのうちの一台である赤塗自轉車は、盜難数時間後(昭和二四年四月六日午前九時半頃)被告人が自轉車商本多正武方に持參し、代金二千八百円で売込むべくこれを同人方に預けた事実、被告人は、右本多正武と対決させられ明白な資料を指摘せられるまで右自轉車預け入れの事実を強く否認していた事実、右二台の自轉車を所持するに至つたいきさつに関する被告人の弁解は、一台は他から買入れ、一台は売却斡旋方を賴まれたというのであるが、いずれも相手方の住居が判然せず、被告人の弁解を肯認するに足る何らの資料も存在しない事実、その他健全な社会観念に照らし被告人が窃取したものであろうことを推認され得るような各般の事実が明らかであつて、以上各般の情況証拠から判断して、被告人の窃取事実を推断するのに少しも不條理の点は認められない。

(註、量刑不当にて破棄自判)

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